パロディ短編小説「月見里の五人きょうだい」

月見里 番外編

シナの五人兄弟のオマージュというかそのまんまです

むかしむかし、ある訪ねる者のいない山奥に、月見里という隠れ里がありました。

月見里のひとたちは、世にも不思議な能力を持っていました。
あるひとは水を操り、あるひとは瞬間移動ができ、またあるひとは触るだけで感電させることができます。

そんな里に、仲のいい五人きょうだいがいました。

ある日、次男の央が里から出て、麓の町を歩いていた時のこと。
央は怪しい男たちに取り囲まれてしまいました。男たちは言います。
「月見里の人間だな。お前を殺してやる」
央は焦りました。聞く耳を持とうとしない男たちを必死で説得しようと試み、果ては土下座までして頼み込みます。
「助けてくれとは言わない。でもどうか、俺の代わりに俺のきょうだいを殺して勘弁してくれないだろうか」
五人きょうだいは、仲が悪いようでした。
それならばと、男たちは央を解放します。

翌日、男たちのところに、約束どおり、次女の西が来ました。
西はどうして自分を殺そうとするのかと尋ねました。男たちは答えます。
「お前らの長老にはいつもひどい目に合わされている。我慢がならん」
西はため息をつきました。まったくもって関係がないどころか、ひどい目に合わされているのはむしろこちらの方です。
話はそれだけかと、男たちは西に銃をつきつけ、引き金を引きました。
重たい音が轟きます。
次の瞬間、西を狙って撃ちだされたはずの鉛玉が、動く力を失って地面に転がりました。
「なんだ? 銃が壊れたか? 仕方ない、気が進まないが、手足を縛って、火あぶりにしてやる」
西は疲れたような表情で言います。
「助けてくれとは言わないけどさあ。……私の代わりに私のきょうだいを殺して勘弁してよ」
五人きょうだいは、やはり仲が悪いようでした。
それならばと、男たちは西を解放します。

翌日、男たちのところに、約束どおり、長女の南が来ました。
南はどうしても自分を殺さないと気がすまないのかと尋ねました。男たちは答えます。
「そうだ。どうしても月見里の人間を殺して、あの憎き長老にひと泡ふかせてやる」
南はばっかじゃないのとつぶやきました。馬鹿じゃないの、じゃなくて、ばっかじゃないの、です。
話はそれだけかと、男たちは南の手を縄で縛り、ライターで火をつけました。
驚くべき事態が起こります。
炎が南がいる場所だけを避けて、ドーナツのような形になって燃え広がったのでした。
「なんだ? ライターが壊れたか? 仕方ない、次は大型冷蔵庫に入れてやる」
南は呆れたような表情で言います。
「助けてくれとは言わないけど。……ねえ、私の代わりに私のきょうだいを殺して勘弁してくれないかしら」
五人きょうだいは、やっぱり仲が悪いようでした。
それならばと、男たちは南を解放します。

翌日、男たちのところに、約束どおり、長男の東が来ました。
東はどうしたら許してもらえるのかと尋ねました。男たちは答えます。
「許す? それはできない。もう俺たちの怒りは最高潮だ」
東は肩をすくめました。そして長老は一体なにをしたのか考えかけましたが、やっぱりやめときました。
話はそれだけかと、男たちは東を大型冷蔵庫に押し込めました。
五時間ほど経って、冷蔵庫の扉が開けられます。
凍えるような寒さの中、東はどこに持っていたのか、文庫本を平然と読んでいました。
「なんだ? 空調が壊れたか? 仕方ない、次はあの、最初の奴を連れてこい」
東はやれやれと億劫そうに帰っていきます。

翌日、男たちのところに、約束どおり、次男の央が来ました。
央は自分をどうやって殺すつもりかと尋ねました。男たちは答えます。
「銃で撃ち、火あぶりにし、凍死させる。これまでにやったこと全部だ」
央は困ったことになったと顔を引きつらせました。実は央には、他のきょうだいほど強い能力がありません。
話はそれだけかと、男たちが言ったときでした。
隠れて見ていたらしい央のきょうだいたちが姿を現します。
「退屈しのぎにこれまで付き合ってあげたけど、それでも結構退屈だったわ」
「俺は別に。久しぶりに心置きなく本を読めたから、感謝したいぐらいだ」
「っていうかさあ、半人前は一人にしておけないんだから、困ったものよね」
みんな好き勝手なことを言いながら、央をかばうようにして立ちました。
「なんだ? 何が起こっている?」
男たちは、身体を動かせないことに気づきます。

「誰が半人前だ」
央が質問すると、西と南と東が同時に答えました。
「央」
四人はなんだかんだ言いながら、隣を並んで帰っていきました。
ちなみに、末っ子の北、こときーちゃんは、家でお留守番です。

五人きょうだいは、仲が悪いとは限らないみたいです。

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