現代サスペンス小説「具現化作家と〆切五秒前」

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最終日 生存者:1名

ほんの数分前まで面と向かって言葉を交わしていた人間が、今は物言わぬ遺体と化している。

『それ』は息絶えた生贄を静かに見下ろして、揺らぐことのない勝利を噛みしめていた。

人間は倒れ込んだ雪野原に大量の血を染み込ませている。雪の上に飛び散った鮮血は、まるで狂い咲く彼岸花のようだった。夜闇を照らす月のもとで見ても鮮やかなその色に、『それ』は全身の血が騒ぐのを感じる。

――勝ったのだ。

硝煙に怯え、嘘の皮をかぶった。誇り高き仲間が犠牲になった。追い詰められて、もう駄目だと何度も思った。それでもやっと、やり遂げたのだ。

人間の遺体を隠そうとするかのように、雪はしんしんと降り続ける。振り返れば、白いベールの先に無人の館がひっそりと建っていた。帰る人間はもういないのに、玄関ホールの明かりだけが暖かく灯っている。

惨劇の終わりを告げる遠吠えが、雪夜の閑寂を牙のように鋭く切り裂いていった。