現代恋愛青春小説「描かれた夏の風」

「お帰り、友絵。難波先生から呼び出しなんて珍しいね。何を言われたのー?」
「えっと……今回の絵の出来は非常に良かった。文化祭の代表もあり得るかもしれないから頑張れ。だって」
自慢みたいで照れくさいが、たった今言われたことをそのまま告げる。
私は椅子を引いて笑顔で友達グループの中に入った。
夏も近づくこの時期、私はようやくこのクラスに馴染み始めていた。
智先輩との一件があって以来、嫌がらせの中心だった女子集団が私に寄りつかなくなったのだ。それにアスカ先輩も、何かあった時には相談に乗ってくれる。
いろいろな人から私の絵が認められて、今では一年A組のホープと呼ばれるほどになっていた。私は恐いくらい順風満帆な高校生活を過ごせている。
「うっわ、羨ましい」
「さっすが。目指せ野間野先輩だね!」
口々に祝福してくれる友人たちに、私は柔らかい笑顔で応じた。
「アスカ先輩は憧れだよ。追いつくなんて、恐れ多くて言えない」
「またまた、この子は謙虚だねえ」
「でもさ、野間野先輩、最近不調なんでしょ? 文化祭の代表、もしかしたらってこともあるかもよ」
友達の一人が声をひそめて言う。
ドキリとした。
文化祭では舞台の中央に優勝な三作品が展示されて、その三人が秋の芸術祭に出ることになる。
このままでは野間野アスカは代表の座を取れないのではないか、と密やかに噂されていた。
「なんでも、絵が描けなくなったとか……まあでもどうせ単なる噂でしょ」
「代表に一番相応しいのが野間野先輩だもの。第一、あの野間野悟朗の娘よ。芸術祭に出さないと苦情が出るわ」
友達はアスカ先輩に関する無責任な噂で盛り上がる。
主席で入学した優秀なアスカ先輩に、一、二年生のほとんどが憧れていた。
その後、みんなは文化祭の代表予想で盛り上がる。
まず間違いないと思われるのが野間野アスカだ。
三年生の有力候補が数人いて、さらに可能性のある二年生が二、三人。
そして、超大穴が私。
一年生の西口友絵だ。
野間野アスカ含め有力候補たちを差し置いて春の優秀賞を取ったのだから、文化祭の代表も有り得ないわけではない。
「まあ、でも、他人の目なんか気にせずに最大限の力を振り絞るだけだよね」
私が言うと、友人たちはそれぞれに頷いてくれた。そう、最終的にこれは自分との戦いなのだ。みんなちゃんと分かっている。
――足を引っ張り合う暇があれば前へ進め。
それが私たちの共通認識だった。

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