現代ファンタジー小説「月見里 超能力者の隠れ里」

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『ゴメンナサイ。貴方ニハ、死ンデ貰イマス』
背中に氷を当てられたような、そんな感覚だった。
n授業の終わりを知らせるチャイムが鳴って、教室を出る。いつものように何気なく開いた靴箱の中に、それはあった。
漆黒のカードに、たった一行。
血の色で刻んである文字が、困惑する心にぐさりと突き刺さる。月見里 朝菜は動けなかった。
「朝菜ちゃん、どうしたの?」
下駄箱の陰から、クラスメイトの斎藤 あかりがひょっこりと顔をのぞかせる。その視線が、朝菜の手の中にあるカードの存在をしっかりと捕らえた。
「な、なんでもないよー。すぐ行くから、先に歩いておいてくれる?」
朝菜はとっさに笑顔を取り繕ろい、手に持った鞄でカードを隠す。
「そっか。わかった」
あかりは、深く追求しなかった。ラブレターかなにかだと思われたかもしれない。その証拠に、あかりの頬はにやついていた。
朝菜は小さなため息を一つ落とした。視線も一緒に、手に持った名刺大のカードへと落とす。
黒地に赤色の文字は、ラブレターにしてはあまりに悪趣味だった。赤く乱雑で、刻んだような文字は、血を思わせる。
下駄箱に無造作に放り込まれていた小さなカードは、単なるいたずらとして見過ごすにはあまりに毒々しかった。
肩にふわりとのった栗色の天然髪を指に絡ませる。
これは、いじめと呼ぶべきかどうか、判断に迷った。
新しいクラスになって、はや三ヶ月。クラスの子達とはそれなりに上手くやっている。帰宅部だから、嫌がらせをしてくるような先輩もいない。はやい話が、こんな暴言を送りつけられるような心当たりがないのだ。
「えっと」
――不快だけど、先生に通報する必要もないかな。
朝菜は、そう判断した。辺りを見回すと、昇降口には数人の生徒がいた。でも、ゴミ箱はない。仕方なく、意味不明なメッセージを胸ポケットにしまいこんだ。
――家に帰ってから捨てることにしよう。
いじめられたこともない。一人っ子で、十数年間ごく平凡に生きてきた。そんな朝菜が、黒い文字にこめられた針のような殺意に気がつくはずもなかった。
そのカードは、これから始まる事件への招待状だった。